出航直前
インタビュー

第52回研修航海
斉木 ゆかり

自分の可能性を信じて
常にチャレンジを

研修団長 斉木 ゆかり 教授

語学教育センター

―今回の研修航海のテーマ「WA! つなげ未来へ」には
   どのようなメッセージが込められていますか

新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために歩みを止めていた研修航海が、3年ぶりに再開されます。実施を心待ちにしていた学生も多くいたと思いますので、「わぁ!」と声をあげた人もいるのではないでしょうか? 今回のテーマである「WA!」には、そのような喜びの感嘆表現のほかに、日本のすばらしさを表現した「和」や、学生と教職員がたくさんの「話」をしながら素晴らしい航海にしてほしいなど、「WA」の一文字にさまざまな意味を込めました。さらに、航海中には楽しいことばかりではなく、苦しく、つらい場面に直面することもあるかもれません。そのすべてを乗り越え、今回の航海を自身の未来へとつなげてもらいたいと、このテーマに決めました。

―今年の研修団の特徴を教えてください

昨年7月から9月にかけて参加学生を募集し、選考の結果、学生84名の参加が決まりました。12月にはオンラインで事前研修を開催しましたが、対面で顔を合わせたのは出港3日前となる2月16日が初めてでした。学生たちは、はじめこそ少し緊張した面持ちでしたが、航海への準備を進める中で打ち解け、出港を前にとてもよい雰囲気に包まれています。共同生活を送る上でのルールや仕組みづくりを進める学生たちは、とても貪欲で意欲的な姿を見せてくれています。航海中は、使える水の量やごみの出し方をはじめ、日ごろの生活では感じることのないさまざまな制限のもとで生活を送ります。しかし、今回の学生たちなら進んで協力し、自ら工夫を凝らして、素晴らしい航海にしてくれると感じています。

―研修航海を通じて、学生たちにどのような経験をしてほしいですか

日本各地の世界遺産を巡る30日間の航海は、寄港地、洋上を問わず、新しい発見の連続になるはずです。その中で、常にチャレンジする気持ちを忘れないでほしい。「〇〇は苦手だ」「やったことがないからできない」と決めつけず、失敗を恐れずに挑戦しながら、自身の可能性に気づいてもらいたいです。今回参加する84名の学生たちがかけがえのない友情と経験を手土産にして笑顔で横浜港に帰ってこられるよう、団役員一丸となってサポートに当たります。

interview

上河内 信義

安全第一に、
実りある航海の実現へ

船 長 上河内 信義さん

東海大学海洋調査研修船「望星丸」

―今回の航海に向けて望星丸はどのように備えていますか

研修航海は新型コロナの影響で今回が3年ぶりの出航となりますが、望星丸は静岡キャンパスの海洋学部・人文学部による海洋実習や調査航海など年間約180日間の航海を実施しており、日ごろから船体の維持、向上はもとより規則に則った訓練も欠かすことなく多様な航海に備えています。一方、12月から1カ月半にわたるドックでの修繕や日常の整備を通じて、研修航海という晴れの舞台に見合ったきれいな姿、最善の状態を維持してきました。また、新型コロナ禍以降は乗組員の毎日の健康観察を継続しており、研修航海の出航を前にノロウイルスの検査も全員が受けるなど健康面でも万全の備えを図ってきたほか、団役員、学生の皆さんを迎える前には船全体でアルコール消毒も行っています。

―船長として意識されていることを教えてください

今回は私が船長に就任してからはじめての研修航海となりますが、この航海に限らず本船の運航にはまず「安全第一」を掲げています。以前勤務していた海上保安庁では「安全運航ABC」と呼んでいましたが、A=当たり前のことを、B=ボンヤリせずに、C=しっかり(チャント)やることが大切です。私たち乗組員は華々しい航海の裏方として、安全運航を保持していく責任がありますから、本船スタッフには「目的、使命を忘れないように」と声をかけています。さらに、その実現に向けては、我々にも楽しい雰囲気がなくてはなりません。「船内を楽しく」することも船長として常に意識しています。

―研修学生へのアドバイスがあればお聞かせください

まず学生たちに送りたいのは「ピンチをチャンスに」という言葉です。今回が初めての長期乗船となる学生も多くいる中、航海中に慣れない船内生活でわからないこと、不快なことに見舞われるかもしれません。そんなピンチのときこそ、この言葉を思い出し、「この事態に前向きに取り組むことで得られる自信がある」「その姿を見て仲間の信頼を得られる」と前向きな姿勢になってください。そうすれば、共に頑張る仲間に出会うことができるでしょう。もう一つ、学生たちには「幸せ上手」になってもらいたい。船内では湯舟は使えずシャワーのみ、それも2日に1回のペースとなりますが、こういった制限も「1日おきでもシャワーが使える」と発想を転換してほしいのです。そう気持ちの切り替えができれば、きっと実りの多い航海になるはずです。

interview

矢野 朝子

コロナ禍を
忘れるくらいの、
一生に残る思い出にしたい

学生長 矢野 朝子さん

観光学部観光学科 4年次生

―海外研修航海に参加しようと思ったきっかけを教えてください

子どものころから旅行が好きで、家族や友人と定期的に国内旅行を楽しんできました。しかし、大学2年次から新型コロナの感染拡大が始まり、旅行に行けないだけでなく、周囲の人たちとの交流の機会もほぼなくなってしまいました。約3年が経過して卒業が近づく中、研修航海の学生募集を目にして、「社会人になる前に、学生生活の中であまりできなかった学生同士での交流・共同生活をしてみたい」という思いで参加を決意しました。全国のキャンパスからさまざまな思いを持って集ったメンバーと船内や寄港地で交流し、新たな友人関係をつくるだけでなく、多くの経験を重ねる中で価値観の幅を広げたいと思っています。

―寄港地や研修中で期待していることや目標はありますか

今回寄港する国内6カ所は、すべて初めて訪れる土地です。新たな文化や環境との出会いをはじめ、自分の視野が広がるような経験を積めると期待しています。中でも、小笠原は以前から行ってみたい場所の一つだったので、とても楽しみにしています。また、船内生活という経験のない環境が中心となる研修航海ならではの学びは、状況判断能力の向上など人として一回りも二回りも成長できる機会になるはずです。

―学生長として、どのような航海にしたいですか

さまざまなキャンパスから84名の学生が集う研修航海は、参加者の数だけ考えや性格の違いがあります。慣れない船内で生活をともにすることから、少しずつストレスが溜まってトラブルが起こる可能性もあるので、一人ひとりの考えに耳を傾けて、ベストな選択をみんなで決めていきたいと考えています。みんなが常に同じ方向を向けるよう、積極的にコミュニケーションをとるとともに、話やすい環境づくりにも力を入れていきます。学生長に選ばれたからには、参加学生全員が「大学生活で一番の思い出」「一生忘れられない思い出になった」と言えるような航海にしたいです。副学生長や班長と協力し合いながら、最高の思い出をみんなでつくり上げてきます。