出航直前
インタビュー


万全の備えで
実りある航海に
船 長 豊田 力 さん
東海大学海洋調査研修船「望星丸」
―昨年6月に望星丸船長に就任され、今回が初めての海外研修航海となります。望星丸はどのように備えてきましたか?
海上保安大学校を卒業後、海上保安庁では巡視船や測量船の船長などを務めた後、未来を担う若手人材の育成に携われることを誇りに思い、全力で責務を全うしようと望星丸船長に就任しました。約8カ月間の望星丸での勤務で印象深いのは、実習に臨む学生の姿が自由闊達で明るい雰囲気であることです。海上保安庁時代とは異なる空気に包まれ、私自身も毎日を楽しんでいます。一方、望星丸は昨年12月から1カ月半にわたるドックでの修繕を経て、長期間の航海にも問題なく臨めるよう整備を重ねてきました。また、特に外国訪問においては外観の印象も非常に大切ですから、乗組員の手で可能な限り塗装も塗りなおして美観を保っています。乗組員も機関や甲板、司厨など各ポジションで装備を見直し、正常に航海できるよう万全の備えを図ってきました。
―海外研修航海で意識されることを教えてください
望星丸での海外研修航海は、一般的な客船での船旅とは違い「研修」が最大の目的であり、参加される学生の皆さんにはそれぞれの目標を掲げて乗船されます。航海を通じて新たな学びや発見ができるよう、我々望星丸乗員一同は全力でサポートしていきます。望星丸は一般的な客船と比べて小型で、居住空間も広くはありません。さらに長い航海中の船内生活では水の使用に制限があり、洗濯やシャワーなど大量に水を使うものは回数も限られます。学生の皆さんは研修航海に参加する時点である程度の覚悟を持って臨んでくれていると思いますが、船ならではの生活に早くなじんでもらえればと思います。操船面では、日本国内の港であれば港湾関係者の手厚いサポートがありますが、海外の港は必ずしもそうではなく、着岸・離岸とも細心の注意が必要です。これまでの経験を生かし、基本をしっかりと全うしていく考えです。また、航海中もっとも怖いのは甲板からの海中転落であり、そのようなことがないよう安全面でも最大限の注意を払っていきます。
―研修学生へのアドバイスをお聞かせください
私自身、海と船が大好きで40年にわたってこの仕事を続けてきました。同じように海洋にあこがれをもつ学生もいるでしょうが、海は我々には何もしてくれません。海と対した時に自分がどのように感じるのかが大切であり、それぞれのとらえ方があるのだと思います。船内では陸上にいる時よりも時間がゆっくりと流れます。また、海上の同じ場所であっても時間や天気が違えば、同じ環境にはなりません。そんなゆったりした船旅を楽しみ、実りある航海にしてほしいと願っています。