出航直前
インタビュー

第55回海外研修航海
豊田 力

船 長 豊田 力 さん

東海大学海洋調査研修船「望星丸」

安全を礎に、海へ
―学びを支える航海を

―昨年度、船長として初めて海外研修航海を経験されました。1回目を振り返っていかがでしたか?

海上保安大学校を卒業後、海上保安庁で巡視船や測量船の船長などを務めてきましたが、望星丸での研修航海は、それまでの船とはまったく異なる雰囲気でした。どこか修学旅行のような和気あいあいとした空気がある中、学生の自主性を引き出す素晴らしい航海だと感じました。一般的な客船とも違う、東海大学ならではの特別な研修になっています。寄港地のパラオは海上保安庁時代以来、25~30年ぶりの訪問でしたが、大きく変わっていない印象を受けました。現地の方と会話する機会がありましたが、日本人に対してとても気さくで親しみやすく、日本との良好な関係が今も続いていることを実感しました。ポンペイは初めての訪問でしたが、開発があまり進んでいない素朴な魅力を感じました。一方で、船長という立場上、寄港中も自由に動けるわけではなく、安全確保を最優先に職務にあたっていました。航海中の天候は曇りがちな日もあり、参加者の皆さんが思い描く南国の青空とは異なる場面もあったかと思いますが、安全運航に支障はなく、全行程を無事に終えることができました。

―2回目の海外研修航海に向けて、どのような準備を進めてきましたか?

望星丸は建造から33年目を迎えました。昨年度から3年計画で大規模な修繕を実施しており、今年度は例年より長い約2カ月間のドック入りを行い、徹底した整備にあたりました。長期間の航海にも万全の状態で臨めるよう、機関、甲板、船内設備の細部に至るまで点検と更新を重ねています。特に白い船体の美観維持には多くの手間と費用がかかりますが、外国に寄港する際、船の外観は「東海大学の顔」でもあります。乗組員自ら塗装作業を行い、常に良好な状態を保てるよう努めています。海外の港では、日本のように手厚いサポートが常に得られるとは限りません。着岸・離岸時にはこれまでの経験を生かし、基本を徹底することで安全を確保していきます。

―研修に参加する学生へメッセージをお願いします。

海外研修航海は観光旅行ではなく、「研修」が最大の目的です。この貴重な機会を主体的に活用し、海の上でしかできない体験を通じて、自分自身の目的や目標を見つけてほしいと思います。私たち乗組員は、その挑戦を全力でサポートします。船内生活は、一般的な客船と比べれば決して広くはなく、水の使用にも制限があります。しかし、陸上とは異なる時間の流れの中で過ごす経験は、かけがえのない学びにつながります。同じ海でも、時間や天候によって景色はまったく変わります。その一瞬一瞬を大切にしてほしいと思います。そのうえで、何よりも大切なのは安全です。特にデッキでの行動など、海上ならではの危険については常に意識してほしいと思います。海には陸上とは異なるルールがあります。安全を第一に、仲間とともに実りある航海を築いてほしいと願っています。