出航直前
インタビュー

第50回海外研修航海
吉田 一也

違う価値観と出会い、
さらなる成長を

研修団長 吉田 一也 教授

東海大学副学長 工学部精密工学科教授

吉田 一也

―今回のテーマである「Think Ahead, Act for Humanity~
   未来につなぐ航海」にはどのような思いが込められていますか?

東海大学は昨年度、建学75周年の節目を迎えました。その歩みは、世に先駆けて新しい領域に挑戦し続けてきた活動の積み重ねによるものです。数ある『先駆け』としての取り組みの中でも最も際立った活動の一つが、今回50回の節目を迎えたこの海外研修航海です。本学が所有する海洋調査研修船『望星丸』を使って、全国から集まった同じ大学の仲間と船内で共同生活を送りながら、世界各地を巡り、寄港地の人々との交流を通じて国際人としての感覚と視野を養う――。「洋上キャンパス」を活用した日本唯一の教育プログラムは、本学にしかできない貴重なものです。

今回の海外研修航海のテーマには、これまでの49回にわたる海外研修航海で培われてきた伝統をつなぎ、新たな一歩となる旅にしたいとの思いを込めました。「新たな一歩」というのは単に大学だけのことではありません、学生一人ひとり、団役員の諸君にとっても、未来に向けた一歩となる航海にしてほしいと思っています。本学は、「自ら考える力、集い力、挑み力、成し遂げ力」の「4つの力」を教育の指針に掲げています。海外研修航海は、その力を短期間で磨くことのできる、またとない機会となるはずです。船の中にあるものだけを使って互いに知恵を出し合い、赤道祭や寄港地の人々との交流イベントをつくり上げる。洋上講座では引率教職員とひざ詰めで語り合いながら学ぶ。そうした濃密な時間を通して学生たちはきっと、大きく成長してくれることと思います。

今回の研修航海では、初の取り組みとして、産業界の皆さまから協賛金をお寄せいただきました。海外研修航海では、学生たちが思い思いに好きなことに挑戦する洋上クラブという活動があり、今回も10余りのクラブが結成されているので、その活動の充実に活用させていただきます。ご協力いただいた各企業にはこの場を借りて心からお礼を申し上げます。

―学生たちには海外研修航海をどのようなものにしてほしいと
   感じていらっしゃいますか?

言い古された言葉ですが、海外研修航海は、「グローバルな視野とかけがえのない宝を見つけられる場所」です。船内の生活や寄港地での交流からは、日本と各地の違いだけではなく、日本のよさ、悪さも見つけることができると思います。また普段の大学生活では同じ学問を学ぶ同年代の仲間にしか出会わない彼らが、まったく別の学問を学ぶ上級生、下級生や、私たちのような大人と生活をともにすることで、違う価値観とも出会うことができるのです。そこには、時に摩擦もあるでしょう、どう振舞えばよいのか悩むこともあると思います。しかし、それを乗り越えていく経験の一つひとつが、社会に出るうえでの貴重な財産になると信じています。

―出発にあたっての決意をお聞かせください。

私が何より誇らしいのは、この50回という節目に団長として参加できることです。そして、何よりうれしいのは47日間を通して時々刻々と成長していく学生たちの姿を、間近に見続けることができることです。きっと彼らは、私が思っている以上に変化し、大きくなってくれることと思います。研修航海に集ったすべての学生たちが、自分自身の成長を実感する旅にできるよう、最大限サポートしていきます。

吉田 一也

interview

荒木 直行,上河内 信義

船長・副船長が導く、
伝統の洋上キャンパス

船 長 荒木 直行さん

副船長 上河内 信義さん

東海大学海洋調査研修船「望星丸」

―50回の節目を迎える海外研修航海への思いをお聞かせください。

(荒木船長)歴史ある海外研修航海の50回目に乗船させていただくことになり、心よりうれしく思います。ここまで続いてこられたのは、松前達郎総長をはじめ多くの方々のご尽力があったからこそだと感じています。今回は1月20日から東海大学校友会の皆さんにご乗船いただき、静岡県・清水港からタヒチ・パペーテまで無事に到着することができました。学生たちの乗船後もこのまま安全第一で航行したいと思います。

(上河内副船長)私はこれまで海上保安庁に務め、今年の1月から縁あって乗船することになりました。海洋学部の練習学生だけでなく、一般の学生も多数乗船する研修航海が50回も続いているのは、本当に素晴らしい伝統だと感じています。約3カ月間の航海を通じて、この伝統を荒木船長から引き継ぎ、旅の最後に研修団の皆さんから「いい航海だった」と言ってもらえるようにしていきたいと思います。

また、望星丸は国際航海をする民間の旅客船ですので、本当に厳しい検査の連続で戸惑うこともありましたが、荒木船長から丁寧に説明をしていただき勉強しているところです。私はこれまで、日ごろ船になじみのない方々を数カ月にわたって乗せるという経験がなかったため、もてなし方もまだ経験が乏しいですが、荒木船長は細やかな気配りを欠かさず、歌の披露などで皆さんに安全で楽しい航海を提供されているので、ともに航海していく中で学び、私なりの“おもてなし”を形づくっていければと考えています。

―これまで望星丸とともに数々の航海を経験してきた荒木船長から、
   研修学生へのアドバイスをお聞かせください。

(荒木船長)私は第6回に練習学生として乗船し、船長としても数々の研修航海に携わらせていただきました。この旅で学生の皆さんには、健康第一はもちろんのこと、望星丸という「洋上のキャンパス」でたくさんのことを学んでほしいですね。東海大学の母胎である望星学塾はデンマークの国民高等学校に範をとって設立されましたが、学生と教職員が寝食をともにし、晴れた日には教科書を使わず畑仕事に汗を流すなど、当初は国民高等学校の教育スタイルを真似ていたと聞きます。これはまさしく、望星丸に今も残る伝統だと思うのです。この素晴らしい伝統を受け継ぎ、立派な学生が育つことを願っています。

interview

小菅 穂菜水

みんなでつくりあげる
50回目の航海

学生長 小菅 穂菜水さん

観光学部観光学科 4年次生

小菅 穂菜水

―海外研修航海に参加しようと思ったきっかけを教えてください。

高校生のときにオープンキャンパスに参加し、海外研修航海について知ったことが観光学部に入学する一つのきっかけになりました。入学してすぐの1年次生のときに第47回の航海に参加して、海外の人々と触れ合い、さまざまなものを見る中で視野が広がったことで、ここまで充実した大学生活を送ることができました。今回は、そんな経験をさせてくれた望星丸に「ありがとう」という気持ちを伝えたいと思って参加を決めました。また、47回のときに見た洋上卒業式があまりにすてきで、私も4年次生になったらここで卒業したいと思っていたので、実現できてうれしいです。

―5つの寄港地を訪れますが、どんなことを期待していますか?

アピア(サモア独立国)では現地の大学との交流会が予定されています。初めて訪れる国なので、どのような文化があり、どのような人間性の人々がいるのか、とても楽しみです。イースター島(チリ共和国領)のモアイ像も見てみたいと思っていましたし、事前研修で調べたタヒチ島(パペーテ)も魅力的な国です。前回参加したときもそうでしたが、海外研修航海の寄港地は、個人旅行ではなかなか訪れないところが多いですから、この航海だからこその経験をたくさん積みたいですね。

―学生長として、どのような航海にしたいですか?

出身地も性格も考え方も異なる100名以上が一つの船で生活しますから、ストレスがたまることもあるし、ルールなども決めていかなければならないでしょう。しかし、何かを決めるときに多数決のような形で多い意見だけを採用するのではなく、一人ひとりの声を大切にしていきたいので船内には「なんでもボックス」を設置して、意見を言いやすい環境を整えたいと考えています。まさか自分が学生長に選ばれるなんて思ってもいなかったので緊張していますし、不安もありますが、せっかく選んでいただいたので、参加したみんなが「楽しかった」「50回の航海に参加してよかった」と言ってくれる航海にしたいです。私一人で頑張るのではなく、副学生長や班長にも協力してもらい、みんなでつくりあげていければと思います。

小菅 穂菜水
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