ご挨拶
学校法人東海大学 総長
松前 達郎
生涯の理想を求める研修
研修航海は、本学の建学の精神に則り、全国のキャンパスから集った学生が、本学所有の海外調査研修船「望星丸」を使用して、船内での共同生活を通じて世界観や人生観を育む、学園の特色ある教育プログラムの一つです。1968年の第1回航海から今回で52回目を数え、1996年の世界一周研修航海(第28回)を含め、参加学生の累計は4,000名を超えることになります。
船旅の魅力は様々ですが、その一つは「日常とは異なる時間の流れ」があるでしょう。我々が暮らす現代社会は、高度に発達した情報技術や交通インフラによって、経済効率を優先させた「高速化」の一途をたどっています。そのような社会でこそ、確固たる世界観や人生観が不可欠でありながら、時間の濁流の中でそれを養うことは容易ではありません。一方で船旅は、優しく厳しい自然の変化を体験しながら、悠久の時の流れを体感できる貴重な機会を提供してくれます。目の前に広がる群青の海と紺碧の空の下で、「人生をいかに生きるべきか」と思索を深めることができます。
また研修航海では、人生の理想を探し求める君の傍らに、生涯の友となりうる仲間と、支えてくれる恩師がいます。情報社会で希薄化された人間関係ではなく、信頼に基づいた「人間本来の関わり方」を学ぶことができるのも研修航海の魅力です。居住空間の限られた船上で他者と触れあい、語り合うことで「人間として大切なこと」を再確認することができるでしょう。
さらに、航海中の多様な研修プログラムとして、寄港地ではその地域の方々との交流や史跡等への訪問が企画され、船上では洋上講座や洋上卒業式といった多くのイベントが行われる予定です。こうした共同生活や研修プログラムを通じて、役割と責任を果たす大切さもまた学んで欲しいものです。
教職員や仲間たちと寝食を共にし、時に人生を語り、訪れる土地の文化や歴史に向き合い、ありのままの自然に触れる。船旅ならではの体験の中に、大いなる発見や感動を見出すことができるでしょう。皆さんには、本航海を人生の新たな出発点として、生涯の理想を定め、勇気をもって歩む「生き方」を学んで欲しいと願っています。