ご挨拶
研修航海企画委員会 委員長
東海大学 学長
山田 清志
学生の一人一人と向き合う教育
デンマークの国民高等学校に範を求めた望星学塾という私塾に端を発した東海大学は、学生と教職員の人間的な触れ合いを基調として発展して参りました。3万人の学生規模を有する今日においても、その基調は変わらないと思っています。大学全体で実施する研修航海は国民高等学校の教育の一つの表れです。
今から55年前、1968年3月1日に第1回の研修航海が出港しました。それから半世紀以上もの歳月をかけて脈々と紡いできた研修航海が、折りしもの新型コロナウイルス感染症の世界的拡大の影響を受け、余儀なく一時的に見合わさざるを得なかったことは皆様もご存知の通りです。しかし、本学にとって伝統と歴史の重みを背負った研修航海を、いかなる時勢にあっても継続的に学生諸君に提供すべきと考え、2022年度、今まさに再始動に全力を挙げて取り組んできました。
これまでの研修航海の寄港地の多くが海外でしたが、今回は一足飛びに外航ルートを求めることはせず、今日のような社会状況下にあっても確実に実施可能な国内ルートで企画立案することにしました。つまり、2022年度の研修航海を「新たな挑戦」と捉えて学びの機会を提供します。
清水港を出港した後、今航海で訪れる寄港地は、小笠原、石垣島、種子島、八代、広島、新宮、そして最後は横浜港に戻ります。日本各地の世界遺産を見聞することを縦軸に、本学と関連深い地域に学ぶことを横軸として、6つの寄港地を30日間かけて回り、4,680海里も航走する長期航海です。さらに、寄港地間を結ぶ航路上では、みなさんが未だ知り得ない日本を見ることになるでしょう。突如海面に突き出た巨大な奇石や列岩など、地球規模で生み出された大自然の造形に触れる機会も想定しています。何日間も水平線しか見ない生活、360°視野の煌びやかな星空、こんな非日常を肌身で受け止めて航海の醍醐味を存分に味わってください。
一方、船内での活動も積極的に取り組んでください。仲間や教職員と寝食を共にし、濃密な時間を共にできるのもこの研修航海ならではの特別な体験です。全ての経験に無駄なものは一つもありません。さあ、質の高い経験を、自身の思考と判断を頼りに楽しんできてください。私は心から応援しています。