出航直前
インタビュー
万全の備えで
実りある航海へ
船 長 上河内 信義さん
東海大学海洋調査研修船「望星丸」
―5年ぶりに海外諸国を訪問する今回の航海に向けて望星丸はどのように備えてきましたか
今回は5年ぶりに海外を訪問することになりますが、望星丸は日ごろから船体の維持、向上はもとより規則に則った訓練も欠かすことなく、実習や調査など多様な航海に備えています。また、昨年12月から1カ月半にわたるドックでの修繕や日常の整備はもちろん、晴れの舞台に見合ったきれいな姿を目指し、乗組員の手で塗装を重ねるなど最善の状態を維持してきました。さらに衛生面や出入国においてチェックが入る検疫、税関への対応準備、安全保安面への配慮も欠かしていません。一方、新型コロナ禍以降に始めた乗組員の毎日の健康観察も継続しています。長期間の航海を前に健康面でも万全の備えを図っており、26名全員がコンディションよく航海に臨みます。
―これまでの経験から船長として航海中に意識されていることを教えてください
前回に海外を巡った第50回海外研修航海では副船長として初めて望星丸での長期間航海に参加しましたが、当時の荒木直行船長の「おもてなし」のすごさに驚いたことを覚えています。訪問地に関する豊富な話題で団役員、学生の皆さんとのコミュニケーションを積極的に図られ、船上イベントでは歌や踊りも披露されるなど素晴らしいおもてなしをされていました。私も荒木キャプテンには及びませんが、昨年度の研修航海では松前達郎総長作詞の「かもめの季節」の歌を、乗組員をバックダンサーにして披露させてもらいました(笑)。航行中は安全第一であり、私たち乗組員は裏方として安全運航を保持していく責任がありますが、今回も船内行事では学生さんたちとコミュニケーションを図れればと楽しみにしています。
―研修学生へのアドバイスがあればお聞かせください
船内という限られた空間、限られたメンバーで長時間を過ごす航海において、学生たちに送りたいのは「ピンチをチャンスに」という言葉です。船酔いや急な予定変更など、航海では何が起きるかわかりません。大きなストレスがかかる場面もあることでしょう。そんな苦しい時こそ「ピンチをチャンスに」と発想を転換してもらいたい。逃げ出したい場面でもできる限りの努力をして、工夫を重ねれば自らを変えられるきっかけになるかもしれません。また、その姿は必ず周囲の誰かが見ていて、評価してくれるものです。余裕がある人は周りのサポート役に回るのもいいでしょう。そうすれば、共に頑張る仲間に出会え、実りある航海にできるはずです。