ご挨拶
学校法人東海大学 総長
松前 達郎
生涯の理想を求める船旅に
学校法人東海大学海外研修航海は、諸外国への訪問や船内での共同生活を通じて世界観や人生観を育む、学園の特色ある教育プログラムの一つです。今回は1968 年の第1回航海から数えて50 回目の節目となり、参加学生の累計は3,800 名を超えました。
この半世紀の節目の航海で我々は、初めて南米・チリ領のイースター島を訪問します。さらにはフランス領ポリネシアのタヒチ、サモア独立国のアピア、ミクロネシア連邦のポンペイに寄港し、文明開化の地・横浜に帰港するという大航海です。
皆さんが、モアイ像や南太平洋の島々の文化を見て何を感じ、人々の暮らしの背景に何を思うのか、ぜひ人類史の奥深さに触れ、自らの世界観や人生観を育んでほしいと思います。そして船旅から多くのことを学んでください。
船旅の魅力は様々ですが、一つに「日常とは異なる時間の流れ」があるでしょう。我々が暮らす現代社会は、高度に発達した情報技術や交通インフラによって、経済効率を優先させた「高速化」の一途をたどっています。そのような社会でこそ、確固たる人生観や世界観が不可欠でありながら、時間の濁流の中でそれを養うことは容易ではありません。
一方で船旅は、優しく厳しい自然の変化を体験しながら、悠久の時の流れを体感できる貴重な機会を提供してくれます。目の前に広がる群青の海と紺碧の空の下で、「人生をいかに生きるべきか」と思索を深めることができるのです。
この研修航海では、人生の理想を探し求める君の傍らに、生涯の友となりうる仲間と、支えてくれる恩師がいます。情報社会で希薄化された人間関係ではなく、信頼に基づいた「人間本来の関わり方」を学ぶことができるのも研修航海の魅力なのです。居住空間の限られた船上で他者と触れあい、語り合うことで「人間として大切なこと」を再確認していただきたいと思います。
また、全行程47 日間の航海では、多様な研修プログラムが計画されています。寄港地では現地の方々との交流会や史跡等の訪問が企画され、船上では洋上講座や赤道祭、洋上卒業式といった多くのイベントが行われる予定です。こうした共同生活と研修プログラムを通じて、役割と責任を果たす大切さも学んでほしいのです。
教職員や仲間たちと寝食を共にし、時に人生を語り、訪れる国々の文化や歴史に向き合い、ありのままの自然に触れる。船旅ならではの体験の中に、大いなる発見や感動を見出すことができるでしょう。研修団学生の皆さんには、この航海を人生の新たな出発点として、生涯の理想を定め、勇気をもって歩む「生き方」を学んでほしいと願っております。