ご挨拶
学校法人東海大学 理事長
海外研修航海企画委員会 委員長
松前 義昭
船旅ならでは体験で特別な「驚き」と「感動」を
学校法人東海大学第50回海外研修航海の旅立ちにあたり、研修団の皆さんにエールを送ります。若き日に海外に赴き、人々と交流し、文化や歴史に触れることは、人生において特別な体験です。学園の創立者・松前重義博士も逓信省(当時)の若き技官として第二次大戦前にヨーロッパを訪ね、デンマークの国民高等学校をつぶさに見学して、自らの教育活動への理想を確固たるものとしました。
現代は松前博士の時代とは異なり、海外渡航はもはや一般的で、学生諸君の中にも海外旅行を体験している人は少なくないでしょう。海外への旅行や遊学、留学のスタイルも多様化し、観光の枠を超えた体験型ツアーから手軽で安価なものまで、さまざまな旅が溢れています。
このように海外旅行の選択肢が広がる今日にあって、皆さんは東海大学の海洋調査研修船で海外に旅立つことを希望されました。その決断を心から歓迎し、行動に敬意を表したいと思います。ひとたび出航すれば逃げ場のない大海原で、厳しい自然と向き合い、限られた居住空間でルールを遵守し、責任を負う集団生活にあえて挑む勇気は、必ずやこれからの人生に有益な体験を皆さんにもたらしてくれるでしょう。私も学生時代に研修学生として、また東海大学に奉職してからは研修団役員として海外研修航海に参加しましたが、その体験は本当に貴重なものとなりました。
旅が人生の糧となるのは、そこに「驚き」と「感動」があるからです。そして大切なことは、その「驚き」と「感動」から「何かを学び取ろう」という意識、姿勢を持ち続けることだと思います。
海外研修航海企画委員会では、今回のテーマを「Think Ahead、Act for Humanity ― 未来へつなぐ航海 ―」と定め、皆さんのその高い意識に応えるべく、特色豊かな研修プログラムをさまざまに用意しました。中でも、南米・チリ領のイースター島に寄港することは貴重な経験となるでしょう。研修航海でイースター島を目指すことは約半世紀の歴史の中でも初めて実現した特別な計画です。
イースター島は、モアイ像をはじめとする古いにしえの文明が注目を集めてきましたが、実はその島民たちは歴史に翻弄されてきた人々であり、人類が普遍に抱える課題に考察を広げる上でも注目に値する地域なのです。そして、サモア独立国をはじめとする南太平洋の島々でも、それぞれの文化や歴史、社会の現況や政治的背景などを学び、地域の多様性や自然との共生、グローバリゼーションの今後についても思索を深めていただきたいと願っております。
恩師や仲間たちと「驚き」や「感動」を共有し、濃密な時間を共にできるのは、まさにこの海外研修航海ならではの特別な体験です。人々との交流、多様な文化との出会いを経て、皆さんがたくましく成長して帰国してくれることを心待ちにしております。